読書ノートから 7


 なつかしい時間

    長田 弘


 たくさんの詩が ちりばめられています。

 ・・・五月の詩人といえば 何と言っても木下杢太郎です。

    燕は来り、また去れる

    お昼の献立は ・・・茄子のしぎ焼、胡瓜もみ

    そしてもう一人、寺山修司です。

    二十歳、僕は五月に誕生した


 ・・・エミリー・ディキンソン

    一羽の弱ったコマツグミを

    もう一度、巣にもどしてやれるなら

    わたしの人生だって無駄ではないだろう


 
 あとがきでは『なつかしい時間』とは

 この国で大切にされてこなかった、

 しかし未来にむかってけっして失われていってはいけない

 誰にもみえているが 誰も見ていない、

 感受性の問題をめぐるものです、と綴られています。


 

  ナスのしぎ焼きがおいしい。きゅうりもみがおいしい。

  ビワの走りがでまわる。寄席があだっぽくなるのが五月

  木下杢太郎詩集 是非読まなければ!


 なんとも美しい 生と死をみつめ人生を時代を見つめた一冊でした。